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再生可能エネルギー(電力)事業構想

当社は2021年5月14日、再生可能エネルギー(電力)事業への参入を表明いたしました。
この新事業につきまして、経緯や事業構想をご紹介させていただきます。

※当記事は2021年5月18日(火)に行いました報道機関向け説明会において、当社代表取締役社長の猪又が説明いたしました内容を基に構成しております。

再生可能エネルギー事業参入までの道のり

当社はこれまでWi-Fiを中心とした通信事業を営んでまいりましたが、東日本大震災の翌年の2012年頃から再生可能エネルギー事業に参入する構想を抱いておりました。
インターネット無料マンションが実現できたのなら、電気代無料マンションも実現できるのではないかというところから構想が始まっております。当時は、太陽光発電のコストが非常に高く、アパート・マンションオーナーは太陽光発電は導入しても、固定価格買取制度を用いて売電し、利回りの一部にするということのほうが一般的であったように思います。
当社としては「いずれクリーンなエネルギー環境のもとで住みたいと思う人が増える時代が来る」と考えていましたが、当時はまだコストが見合わなかったのです。
そのような中、1年半ほど前にあらためて太陽光発電について勉強し直したところ、随分コストが下がっているということが分かりました。今なら事業参入できるのではないかと考え、いろいろと調べた結果、再生エネルギー事業は通信事業と非常に親和性が高いものと考え、太陽光発電の構築・運用コストをさらに下げていけば、インターネット無料マンション同様、電気代の無料化(定額化)を実現できるのではないかと考え、参入を決めました。

再生可能エネルギー事業スキームについて

太陽光発電のシステムを開発して、太陽光パネルを自治体・マンション・ホテル・様々な施設等に設置し、発電した電力を供給するというスキームです。
基本的に太陽光発電は非常に不安定な電源です。電力を安定的に供給していくためには蓄電池が重要になります。蓄電池の技術は日進月歩ですが、現在のところ非常にコストが高いです。そこで当社が目を付けたのが電気自動車の蓄電池です。今後、世界中の自動車がEVになっていきますので、リユースの蓄電池を活用することで、さらに環境に貢献していけると考えました。
当社が目指すのは、基本的には「地産地消モデル」にも似た「自家発電自家消費型」のビジネスモデルです。しかしそれだけでは完全にオフグリッド※1にはなりません。今後、様々なイノベーションが起こってくると、蓄電池の容量や太陽光発電の発電効率が上がり、完全なオフグリッドが実現する時代もやがて来るとは思いますが、安定した電力を供給するためには、完全なオフグリッドが実現できない以上、現状ではオングリッドでの電力供給も活用していかなくてはなりません。即ち、オフグリッドとオングリッドのどちらも活用したハイブリッド※2で運用していかなければいけません。
一方、消費者に対する電力消費量の「見える化」も重要です。このシステムを開発してロケーションオーナーに電力を供給していくためには、通信サービスを介してクラウド制御をしながらIoTデバイスを使い、電気の使用者に対して消費電力の見える化をしていくことが非常に重要だと思っています。当社は、IoTの本質は遠隔化と可視化だと考えています。これは通信事業と非常に親和性が高い部分です。

※1 オフグリッド

送電網につながっていない状態であり、電力会社に頼らずとも構内で電力を自給自足で暮らせる状態を指します。

※2 ハイブリッド

ここでは、オフグリットとオングリッドの方式を組み合わせた状態のことを指します。

再生可能エネルギー事業に参入する狙い

  1. 事業特性

    インフラ関連ビジネス、ストック型ビジネスという点で通信事業と共通の特性があります。光ファイバー・電力網等の送配電インフラ事業は、公共性の高い一部の大企業にしかできないと思われがちです。
    しかし、対象をマンションや商業施設などの構内に限定することで、当社のような中小企業やベンチャー企業でも参入できると考えています。当社は通信事業でマンションやホテル、商業施設等の構内のインフラ事業を手掛けてきました。それと非常によく似ていると考えています。

  2. 通信事業とシナジー効果が高い

    顧客層は通信事業と基本的に同じです。当社はマンション・アパート・ホテル・自治体や商店街のWi-FiやホームIoTを手掛けています。この地産地消型システムにおいては、通信サービスを介してIoTデバイスを活用していくことが必須であると考えています。
    そのため、再エネシステムを売り込んでいく際、同時に通信サービスも販売をしていくつもりです。ビジネス的に非常に相乗効果があると期待しています。

  3. 持続的成長モデル

    事業は短期的に終わってはいけません。特に上場企業は、ESGやSDGsへの対応を通じて、社会課題解決型の企業となることを強く求められております。それ自体をビジネスにして収益を上げていかないと持続しません。環境に貢献できる、社会課題解決型の企業になるためには、持続可能なビジネスモデルである必要があります。
    例えば蓄電池リユースの促進がありますが、一つの蓄電池を作るためには、私達が普通に1年間生活する場合に消費する電力を3人分以上使うそうですが、現在はそれがほとんど産業廃棄物になっているそうです。しかもそれを廃棄するときにCO2を出すのです。ここをどうにかしたいのです。
    今から各国は、2030年、2050年に向かってどんどんEVを普及させようとしていますので、いずれ必ずEVの蓄電池の廃棄問題に直面するはずです。EVのような移動型蓄電池から定置型蓄電池に再利用することによって、蓄電池を最後まで使い切ることを模索していきたいと考えています。

  4. 価格競争力

    現在は、リユース電池や蓄電池をはじめ、パワーコンディショナ※3のコストが高過ぎます。
    欧米や中国では、太陽光発電のシステムが非常に小型化していて低価格のものが普及しているのに比べ、日本では基本的に一戸建て用か、産業用がほとんどです。日本の太陽光発電コストを下げ、再エネを普及させていきたいと考えています。

  5. 制御システムの開発

    電力は安定供給をしなければいけません。太陽光発電は電力の安定供給という面では非常に不安定です。
    例えば、雨の日は発電力が低下しますし、夜になれば基本的に発電しません。クオリティーの高い電力の安定供給と完全オフグリッドを目指していくためには、高度なシステム制御が必要になります。
    通信サービスを介してクラウド制御を行うとともに24時間365日監視をする「バッテリーマネジメントシステム(BMS)」の開発が不可欠です。どの蓄電池メーカーでも利用できるようなオープンなシステムを開発していきたいと思っています。

  6. VPP(Virtual Power Plant)※4

    端的に言えば電力供給の最適化です。余っている電力を別のロケーションオーナーに供給していくなど、電力を分け合うことによって、創エネ・蓄エネ・省エネを実現できます。
    例えばドイツは世界の中でも最先端を進んでいますが、様々な乗り越えるべき壁があり、現状の日本ではなかなか実現することが難しいのではないかと考えています。解決のためには法的な規制緩和も必要になると思いますが、当社はこの点にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

※3 パワーコンディショナ

太陽光発電システム等を利用する上で、発電された電気を家庭などの環境で使用できるように変換する機器です。

※4 VPP

仮想発電所のことで、点在する小規模なエネルギーソースをIoTを活用した高度なエネルギーマネジメント技術によりこれらを束ね、遠隔・統合制御することを指します。

ビジネスフローについて

当社は室蘭工業大学様と共同研究をしながらシステムを開発してまいります。開発したシステムを一体型の太陽光発電システムとしてロケーションオーナー(公共施設、商業施設、学校、集合住宅など)に販売します。
今後、特に自治体においてはCO2の削減目標が個別に必ず設定されます。これは自治体にとって、再生エネルギーを採用していくということが必須になることを意味します。
ところが、自治体は財政的に厳しいところがありますので、当社がコストを下げて販売し、自治体が積極的に太陽光発電システムを導入できるようにしたいと考えています。
当社グループは購入費用や運用保守費用をロケーションオーナーにご負担いただきながら、販売した太陽光発電システムを使って発電させます。当社グループは電気小売事業者となり、利用者(例えば集合住宅であれば入居者)に電気を販売して、継続的に収益を得ます。
環境にも貢献し、さらにコストの安い電気を供給するということです。しかし、このビジネスモデルを実現するには非常に高い壁があります。
そこで、ご縁のあった室蘭工業大学様と共同研究をするに至りました。室蘭工業大学様には、システム開発の要件定義(RFP策定)、当社が開発したシステムの客観的な評価、システムのブラッシュアップ、アドバイスなど、様々な形でご指導いただく予定です。

評価のポイント(室蘭工業大学様より)

今回のシステム開発で最も重要なポイントは、リユースの車載バッテリーを使った電力の供給システムを構築することです。電池というものはどれも新品の状態での性能が示されていますが、それが10年程度使ったときにどの程度性能が変化しているかは個々に違いますし、利用条件によっても違ってきます。システムを組み上げたときに、どの程度のパフォーマンスを出すのかというところをきちんと電気工学に基づき計測をして評価をしていきます。
また、太陽光パネルや電池の性能はグラフ化されますので、単なる評価をするだけでなく、そういったものを元に大学側であらかじめシミュレーションをします。そのシミュレーションに対し、開発システムはどの程度のところで一致しているのか、あるいはクリアすべきレベルに到達しているのか、そういった視点でものを見ていくところが中心になっていきます。
なにぶん、リユース電池を扱っているところが他にないため、評価方法などをきちんと考えながら、大学側が提案していく必要があろうかと思っています。
それから、このシステムの普及においてのボトルネック(価格の問題など)があろうかと思いますが、どのような点が真の意味でのネックになっているのかというのは、研究をしていく過程で見えてくるのでしょうけれども、実際のことを考えていったときに、どういった点が重要な開発のポイントなのか、そういったこともシミュレーションと評価の中で明確にしていきたいと考えております。
もちろん、開発対象となる個々の機器のパフォーマンスも当然見てまいりますし、将来のVPP化を考えますと、その品質、周波数や電圧、波形の問題、こういったところまでもきちんと評価をさせていただきます。
今後は実証施設において評価してまいりますので、その実証施設の中での総合的なパフォーマンス、総合効率というものもきちんと評価し、システムの改善が必要であればその助言を申し上げていく、こういう立場で大学側はアカデミアとして今回、研究開発に参加していく次第です。

運用イメージ

地産地消システムが確立されるまでの間は、オングリッドおよびオフグリッドのハイブリッド運用で対応してまいります。
蓄電池容量の確保に伴い、オフグリッドによる地産地消システム化を徐々に進展させていきます。イノベーション能力を持った他の製品を利用しながら、当社は全体として最適化をしていこうと考えています。
太陽光発電は日照時間の影響を大きく受けますが、試算によれば発電量の多い昼間は、オフグリッドが十分可能ではないかと考えております。昼間はオフグリッドで電気を利用していただき、さらに余剰分があれば蓄電池に溜めます。
しかし、梅雨時期や台風など天候の影響で日照時間が短い場合には、昼間でも発電量が非常に少なくなることが見込まれます。
また、夜間の電力使用量は昼間の2倍程度と言われています。このため夜は放電をすることになりますが、それでも電力が不足する場合が出てきます。
そのような場合は、例えば新電力や電力会社などから調達した電力を当社が電気小売事業者となり、オングリッドで安定的に供給することを考えています。

事業ロードマップ

2021年7月~
新年度の2021年7月よりリユースの蓄電池、制御システム開発の実証実験を開始いたします。
システムのプロトタイプを開発し、実証実験を通してどのような使い方が可能かということも含めてシステム開発に着手いたします。
また、当社の関連グループ会社である株式会社FGスマートアセットが保有する来年2月末に竣工予定のモデル棟(埼玉県川口市)に、太陽光発電システムを設置し、フルスペックのIoTも装備して実証実験を行う予定です。実際に入居者が生活する状況のもとで、電力の安定供給を実現できるか検証してまいります。
当然、当社だけでなく、リユースの蓄電池を提供いただく自動車メーカーさん等のご協力を仰がなければいけませんし、他にもパワーコンディショナにおいても様々な企業の皆様とパートナーシップを組んでいきたいと考えております。
また、電力の安定供給のためのオングリッドでの電力供給については、新電力の方々、既に事業展開を幅広く行われている方々ともパートナーシップを組み、どのようにして安定供給ができるか、クオリティーの高い電力を供給できるかという視点で実験していきたいと思います。
2023年頃~
2023年頃からは、有事の際に再生可能エネルギー・蓄電池が活躍するはずである地方自治体の庁舎、学校や広域避難所、さらには集合住宅などに設置を開始したいと考えています。
2025年頃~
2025年頃からは、VPPサービスを開始し、電力を分け合い最適化する取り組みを進めます。電気の供給効率を向上させることにより、供給原価が低下することも期待できます。
政府は二酸化炭素排出量を2030年までに2013年度比46%減とする目標を発表しましたが、当社としてもこれに寄与できるものと考えています。
具体的には、3万棟を超す集合住宅への導入を進めることで、大規模な原発一基分に相当する発電量を目標にしたいと考えています。企業や地方自治体等は、いずれ必ずCO2の削減目標を掲げるなど脱炭素社会への対応を迫られるときがきます。導入しやすいようコストダウンを図りながら、これに寄与してまいります。
2030年頃~
当社は、2030年までに日本の太陽光発電のコストを5分の1、できれば10分の1にしたいと考えています。まずは投資コストの削減が必要です。中東やカリフォルニア州では、発電コストが1キロワットアワーあたり2ドル台という低コストを実現しています。日本はまだまだコストが高過ぎるので、コストダウンを進め、再生可能エネルギーの普及を図っていきたいと考えています。
化石燃料は有限です。掘れば掘るほど希少価値が増してコストが高くなります。私は昔から、こんなに太陽が照っているのだから、人類はこれを活用しなければいつまでもCO2は減らないのではと考えていたのです。
そして経済合理性の問題です。もともと太陽光は元手がタダなわけですから、これを工業製品化して、大量に売り、普及させなければいけないのです。そのためには、やはりコストを下げなければいけないと考えています。
当社は、通信事業と同じように一気通貫で発電のシステムを開発・設置するとともに、小売電気事業者となって電気そのものを供給していきます。さらにはヘルプデスク、サポート、保守・メンテナンスなど、全てを一気通貫でやることによって、コストダウンを図りたいと考えています。

新子会社の会社概要

当社は現在、ファイバーゲートを含めて6社程のグループで形成されております。
2021年7月1日に100%子会社を新設し、電気事業に参入いたします。
新設子会社の役割は、主に以下の4つです。

  1. 再生可能エネルギー生産システムの開発、販売、運用
  2. オングリッド、オフグリッドを問わず、電力小売事業をユーザーに幅広く展開

    当子会社が電気小売事業者ということになります。

  3. 周辺業務に関するパートナー企業の選定とそれら企業との展開

    蓄電池・リユース蓄電池・パワーコンディショナの他にも、周辺業務として工事等様々なものがあります。機器のコストダウンだけでなく、工事のコストダウンも非常に重要な要素だと思います。また、オングリッド時の安定供給をしていくために、新電力会社(いわゆるPPS)や大手電力会社等の企業様とのパートナーシップを広く模索してまいります。

  4. 運転資金については、新設子会社が独自に調達の予定

    運転資金については子会社独自が調達をする予定です。
    現段階ではまだ成果が未知数の新事業に、投資家の皆様からお預かりした大切な資金を投じるわけにはまいりませんので、資本金の範囲でリスクテイクしてまいります。自己のリスクを取りながら、投資家の皆様方にはなるべくご迷惑をかけない、自己責任の中でやっていくということを予定しております。

社会解決企業としての決意表明

特に上場企業はESG、SDGsの持続可能な成長に向けての対応を迫られております。当社としましても社会課題解決型企業としての役割をどのように全うしていくべきかを模索してまいりました。
先日、小泉環境大臣から「日本の新築住宅には太陽光パネルを義務化するべきだ」というご意見がありましたが、CO2削減は今やグローバルな目標となっています。これに微力ながら一助となりたいと考えております。
当事業は当社グループなりのひとつの現実解です。この国の未来のための仕事であると思いますし、次の世代、さらには次の次の世代まで胸を張ってできる仕事だと確信しております。
どうか、皆様のご指導ご鞭撻を伏してお願いを申し上げる次第でございます。